今から24年前、8月5日厚生年金会館(現広島市文化交流会館)で行われる平和集会で、平和をテーマに何かできないかと依頼がありました。私はかねてから命の尊さをテーマに、「子どもたちの笑顔が絶えない戦争のない平和な世界を私たちの手で守らなければならない」と訴えることができないだろうかと思っていました。また、幼い頃、祖母や母から原爆の話を聞き、「同じ人間が一瞬にして平和な世界を奪い、地獄のような恐ろしいことをするなんて信じられない!そんなこと決してあってはいけない!」と思いました。このような悲劇が二度と繰り返されてはいけないと、子どもたちと平和を願って演じよう、そして、「子どもたちの素晴らしい笑顔を消さないで」とみんなに訴えよう、その思いが「I
PRAY」という形になりました。
それ以来、毎年子どもたちと平和を願って平和創作劇「IPRAY」の公演をしてまいりました。道端の花を見て、空の星を見て「綺麗だなあ」と感じられる素直な感受性の高い子どもたちでいてほしい。そして、音楽・ダンスを通じて元気と笑顔や、人として忘れかけている大切な心を伝えていくことが私の仕事だと思っています。
「I PRAY」の練習を重ねるうちに、子どもたちは日々変わっていきます。「ちょっとの火傷でも痛いでしょう、体中が火傷してそれでもお母さんや兄弟を探して回る、痛さ忘れるほど怖い、喉が渇いて焼けてて死にそう、それってどんなだと思う?」 そんな問いかけから稽古を始めていきます。「ここにいるみんなは仲間よ。みんなが仲良くしてゆくことが平和の一歩よ。」「みんなの笑顔でどれだけの人が救われるかわかる?」稽古が進むにつれ、子どもたちは本気で怖いと泣きながら演じ、笑顔ができなかった子どももキラキラした笑顔で心をこめて歌って踊れるように、そして自分の思いを伝えられるようになっていきます。
この子たちがきっと平和な世界を作ってくれる…そして明るい未来がやってくる…
子どもたちのメッセージ I PRAY「この地広島からあの夏の出来事とともに再び核の被害をくりかえしてはならないと全世界に伝えていかなければなりません。
それが私たちにできることであり私たちの使命だと思います。
原爆犠牲者のご冥福を祈り平和への祈りをこめて大切なあなたに伝えます。」この輪が広がって、皆が手を取り合えばいじめや戦いのない平和な世界に一歩でも近づくと子どもたちも信じて願って演じています。
本番を終えた日、反抗的だった子どもが「お母さん産んでくれてありがとう」と言ってくれたと感謝のメールをいただきました。
子どもたち、そして一緒に参加したお母さん方にとってI PRAYは、平和や戦争について、またいつもの生活がいかに平和で幸せなことかを考えるよい機会となったと思います。「一人で死んでいった人はどんなに寂しく怖かっただろう。」「被爆シーンの練習の後、家に帰ったらお母さんがいて安心して涙が出た。」「毎日学校に行って、友達と遊んで、寝て起きていつも繰り返しと思ってたことが幸せなことなんだなと思った。」「このI
PRAYを皆さんに見てもらって戦争のない平和な世界にして欲しい。」最初は何も言えなかった子どもたちがこんなことを言ってくれました。子どもたちが願うように、沢山の人々に見てもらい、沢山の人に出演してもらえたら、平和の大切さ、戦争の怖さを伝えていけます。あの夏の悲惨な出来事に目をそむけるのではなく、忘れないように伝えていかなければならないと思います。
これからも私たちは、平和を祈り、そして訴え続けていきます。
総合プロデューサー 木原 世宥子